徒然随想“いま”政治に思う(平成20年5月)

 最近の政治報道を見ていると、いささかバランスの悪さを感じてならない。何事も批判することは 簡単だが、政治は地に足がつき、実行可能でなければ意味がない。何より結果が国民のためにならなければならない。政治家もマスコミも責任の重い仕事だ。そして時の世論すらも歴史の中で自ら責任を負うものだ。
 政治には大局観が必要だ。「木を見て森を見ず」という諺があるが、部分を捉えて論じたとき正しいことも、全体を見て判断するとそうとは言えないことも多くある。政治は総合判断が大切である。
 「福祉等の行政サービスは手厚いほうが良い」「税金は安いほうが良い」しかし同時に両方を求めるのは難しい。行政サービスには当然相応の財源が必要なのだから。
 大切なことは、政策目標の優先順位を的確に判断し、その達成に必要な財源の負担の在り方について皆が納得できる妥当性・公平性を確保することだ。
 この時、順序を間違えてはいけない。
 まず初めに、①『政策として何を、どこまで、どうするべきなのか』=国民からすれば「何に対して税金を払うのか」「どこまでのサービスが保障されるのか」をはっきりさせなくてはならない。その上で、②「そのためにはいくらのコストがかかり、その財源は誰がどのように分担することが公平なのか」を決めるのだ。
 むろん②から①を見直すということもあるが、本来①がはっきりしないのに②の議論が先行することはない。
 ところが、いわゆるガソリン税の議論にしても、社会保障政策の議論にしても、政治の在り方の議論にしても、最近の風潮は、まず先に②のコスト議論ありきという傾向が強すぎるように思う。無駄遣いを削る必要性は当然のことだが、安易な目先の議論に目を向けすぎて大局的に大切なことを見失っていることがあるのではないか。
 特に、医療政策については、近年高齢化に伴う医療費の増大を懸念する余り、社会保障費全体を強く抑制してきたが、それはもはや限界に達している。日本の誇ってきた医療体制は崩壊寸前だ。
 大切なのは、コストよりも「誰もが等しくいつでも安心して最良の医療を受けることができる」ことではないか。
 高齢化時代を迎える中で、医療費の抑制は課題ではあるが、国民の安心安全を第一に考えることが大切であり、そのために必要な財源であれば政府は国民にしっかりと説明して負担をお願いするべきだと思う。
 しかし、近年の制度は目まぐるしく変わりすぎるし、政府が目指すものとコスト負担の在り方がわかりにくい。後期高齢者医療制度についても、地域格差を是正しつつ各所でコスト削減努力が働きやすい仕組みにして持続可能な高齢者医療を構築しようという制度の趣旨自体は理解できないわけではないが、やはり批判が止まない理由は、「取られる税金は増える一方で、受けられるサービスは減らされる一方」という感覚ではないだろうか。
 本来、政府はまず国民にとって何が大切なのかという価値判断を示し、その上で目標とするところをはっきりと示し、国民共通の目標とすることが重要だ。すなわち、まず①「国が国民に何を保障するのかをはっきり示すこと」が必要であり、それなしに②「負担」のみをお願いすることは不信と不満を生むばかりだ。
 アメリカのような自由放任主義に立って、医療における自己責任領域を拡大することも一つの選択肢ではある。しかし、アメリカ医療の実情を視察した経験から言えば、アメリカでは日本のような国民皆保険制度がない(自由経済主義の強い風潮の中で創設には反対が根強い)中で、保険に入れる人と入れない人、お金のある人とない人で、受けられる医療サービスに大きな格差が生まれているのが現実であり、命の重さがお金で左右される ような、そうした社会を日本人が求めているとは私には思えない。低負担高福祉は元より成り立たないが、現在我が国が国家の命運を賭けて国際経済競争力の強化と財政再建のために小さな政府を指向し改革する中とは言え、行き過ぎたアメリカ型自由主義、安易な低負担低福祉社会は和の文化を持つ日本人には合わないのではないか。
 日本の医療政策を考えるとき、政府は、これまで培ってきた「全国民に等しくいつでも最良の医療を提供する」ことを国民全体が共有できる価値として、はっきりと最優先目標に定めるべきだ。その上で、「そのためには、いくらコストがかかり、その財源はどの世代・どの所得層の人がどういった割合で負担していくことが公平なのか」について、国民が納得できるプランを示すことである。
 むろん低所得の方の負担増は避けたい。子孫の世代にあまりツケを回すこともできない。とすれば、明確な目標の下で、消費税や特定財源を含めた聖域なき税制行財政全般の改革の在り方を示し、国民の合意形成を図る必要があることは直視すべき現実であり、もはやツギハギ政策ではいけないところまで来ているのではないか。

   平成20年5月下旬                  愛知県議会議員 山下史守朗  記す

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